第153回国会 衆議院
沖縄及び北方問題に関する特別委員会議事録 第2号
平成13年11月21日(水曜日)午前9時開議
大木委員長
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小渕優子君。
小渕委員
おはようございます。自由民主党の小渕優子でございます。
本日は、貴重な質問の時間を与えていただきまして、ありがとうございます。限られた時間でありますので、
早速質問に移らせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
まず、米国内で勃発した同時多発テロ事件以降の沖縄における観光産業の影響についてお伺いいたします。
九月十一日テロ事件以降、沖縄への観光旅行のキャンセルが相次ぎ、現在までに例年と比較して四割ものマイナスと伺っています。
沖縄は、自然環境に恵まれ、また文化の面でも、歴史の面でも大変豊かなところであります。
沖縄にとって観光はまさしくリーディング産業であり、昨年行われました沖縄サミット以降知名度もアップし、
さらに人気が加速して、国の中だけでなく国の外からも多くの観光客が訪れていました。
そのような状況下でのテロ事件の勃発により、沖縄への観光旅行者の数は急激に落ち込み、沖縄の観光業は大きな痛手をこうむってしまいました。
この事実に関し、政府におかれましては、各省庁ごと、また連携をしまして、さまざまな対応を検討し、施策を講じていただいていると承知しております。
先日は、沖縄に尾身大臣みずから足を運んでいただいたと伺っております。
しかし、米軍が駐留し、基地を抱える沖縄についての現状、そして安全性が正確に伝えられていないのではないか、また理解をされていないのではないかという心配もあります。
今後、こうした安全性をPRするだけでなく、沖縄の観光について、緊急的対策も含めて、政府としてどのように対応していかれるのか。
元気を失いつつある沖縄の観光産業振興への取り組みについて、尾身沖縄担当大臣に、実際に沖縄を訪問された際の御感想も含めて御所見を伺いたいと思います。
よろしくお願いいたします。
尾身国務大臣
小渕議員のお父様が沖縄サミットを決められたわけでございまして、その後継者として出られた小渕議員がこうやって
沖縄の問題について質問されるということは、私にとりましても感無量の思いでございます。
観光の問題は、テロ発生以来非常に、特に修学旅行のキャンセルが続いておりました。
そういうわけで大変心配をし、観光客もかなり減ってきてはいた実情でございます。
私どもに、現地の方は、沖縄県議会挙げて決議をいたしまして、沖縄は安全である、そのことをアピールしてほしい、こういうことも言っておりますし、
また、事柄の性格上、テロに関してはどこが安全でどこが危ないということを簡単に言えるわけではございません。
そういうわけで、私ども、全国向けに沖縄への観光にぜひお出かけいただきたいというPRをしているわけでございまして、
昨今におきまして、ややキャンセルの動きがとまったかなということを現地からは伺っております。
しかしながら、ただいまの状況において観光産業に対する大変大きな打撃を受けていることも確かでございまして、資金繰り等について特別の相談窓口を設けるとか、
あるいは特別の融資制度を新たに新設するというようなことをいたしまして、このことによる観光産業の打撃を極力軽減するような措置をとっているところでございます。
世界全体としてのテロの問題の解決ということが非常に大事な要件になってくると思いますが、徐々に落ちついて、
また本当の意味の沖縄の魅力をいろいろな方々に御理解いただける日もいずれ来るのではないかというふうに期待をして、頑張っているところでございます。
小渕委員
ありがとうございました。大臣におかれましては、さらなるお力をいただけますようにお願いを申し上げます。
今、大臣からお話がありましたように、観光産業への影響が一番著しくあらわれたのが、各学校における修学旅行の相次ぐキャンセルであります。
中学生、高校生といった大変多感で感受性豊かなときに、すばらしい自然に触れ、文化や歴史を学ぶということは、
青少年の育成にとって大変重要で、またすばらしいことなのではないかと思います。
ただ、心配しておりますことは、学校のような場合、年間行事を、一度行き先を変えたりしました場合、
来年度また沖縄に来てくださいと、変更するということがなかなか困難であると聞いています。
何かよい方法はないかと考えておりますけれども、ぜひとも来年度、修学旅行の行き先を沖縄にしていただきたいと思っております。
それについて何かお考えがありましたら、対応も含めてお聞かせいただきたいと思います。
尾身国務大臣
風評による動きでございまして、なかなか難しいのでございますが、来年だけではなしに再来年の修学旅行の予約もぼちぼち始まっているというふうに伺っておりまして、
そのために、日本じゅうに観光キャンペーンに行くとか、いろいろな手を打っております。
また、世界全体の中でも、今回のこのアフガニスタンの動きに見られるように、根拠地をなくするというような動きもあるわけでございまして、
そういう動きと相まって、徐々に落ちついてくるものと期待をしております。
もとより、沖縄本体そのものは大変自然に恵まれ、また歴史的遺産も多くあるわけでございまして、観光地として非常にすばらしい条件を備えているというふうに考えております。
私どもも今後ともPR等については全力を挙げてまいりたいと考えております。
小渕委員
あわせて文部科学省も、どのような取り組みをされるか、御意見をいただけたらと思います。
玉井政府参考人(文部科学省大臣官房審議官)
沖縄への修学旅行に関してでございますけれども、御案内のとおり、私どもとしても、沖縄への修学旅行がきちんと促進されるように、こう思っております。
去る十月十六日付で、国土交通省と連携協力を図りながら、各都道府県教育委員会等に対しまして、一つは、今後の沖縄修学旅行の実施に当たり、
やはり予定どおりの実施が望まれること、二つ目として、海外への修学旅行の国内への変更を検討する際には沖縄を代替地とすることも検討に値すること、
こういう内容の通知を発したところでございます。
それから、大変重要なのは、実際に今沖縄に修学旅行で行っていらっしゃいますし、そして意義ある活動がなされているわけでございますので、
そのことを全国の学校に周知を図るということが大変重要だろう、かように思っております。
そういう意味で、全国の学校に修学旅行の情報を流しております団体、日本修学旅行協会、それから全国修学旅行研究協会、
ここを通じて、私どもとしては、沖縄の今の修学旅行の状況、PRに努めているところでございます。
さらに、国土交通省と連携協力し、今月から順次、二百人ぐらいを目途として、中学、高等学校の校長さんやPTA関係者などに沖縄に行っていただく、
それで今の沖縄の状況をよく知っていただく、そういう方向で努力をさせていただきたい、かように思っております。
小渕委員
ありがとうございました。
学校関係者または生徒さんだけでなく、保護者の皆さんにも御理解いただけるように、お力いただけますようにお願いいたします。
それでは、次の質問に移らせていただきます。
ただでさえ全国より高い状態が続いているのに、また、リーディング産業である観光がテロ事件以降著しく後退していることから、
私は、さらに失業率が悪化する可能性が高いのではないかと危惧しています。
特に私が心配していますのは、失業者の中で若い人たち、若年層の占める比率が大変高いという事実であります。
多くの若者たちは、このすばらしい沖縄、自分たちのふるさとをこよなく愛し、ここ沖縄で就職することを望んでいます。
にもかかわらず、職場がなかったり、また、雇用の場が広がりつつある情報通信産業においても、教育における達成度の面から、
沖縄の若い人たちが就職することは容易でないという問題があります。
沖縄がこれから自立、発展していくためには、この若者たちの力というものがかなり大きな位置を占めてくると思います。
さらに言えば、この若い人たちのエネルギーを最大に生かしていかなければ、沖縄の将来は考えられないのではないかと思います。
二十一世紀を担う世代が、これからの二十一世紀の、あしたの沖縄を考え築いていく、そのことが沖縄の真の自立へつながっていくのではないかと思います。
そうした意味で、この若い人たちのエネルギーをこれからどのように活用していくか。
雇用の場の創出こそ、沖縄の自立へのビジョンと考えておりますけれども、尾身大臣におかれましても、この件に関しまして御所見を伺えたらと思います。
尾身国務大臣
おっしゃるとおりでございまして、現在、沖縄の失業率、平均で九・四%ということで、日本全体の五・三%と比べて倍近い失業率でございますし、
また、特に若年層については一七・八%という非常に高い失業率でございます。
これからの未来を背負って立つ若者がそういう高い失業率の状態にあるということは、まことに憂うべき状態でございまして、
特に若い方々が働けるような状況をつくり出す必要があるというふうに考えております。
観光と並びまして、情報通信の産業を沖縄で育成したいというふうにかねがねずっと私ども、努力をしてまいりまして、この面でも、
ここ数年で約四千人の若者が情報通信関係産業で働けるようになって、そういう意味では、大きな成果を上げたというふうに考えております。
ただしかし、中長期的には、IT関係の教育を充実するというようなことも含めまして、有能な人材を情報通信関係で育てていくということが、
長い目で見て沖縄の発展それから若者の雇用拡大につながるというふうに考えておりまして、そういう面での対策もいろいろととっているところでございます。
特に、国立の工業高等専門学校をつくるということを今進めておりまして、技術系の現場で第一線で働けるような人材を育てることによって、
これからの沖縄の発展を担う若者がしっかりとした技術的知識を持って働けるような体制を整え、そこをまた軸として、そういう産業が沖縄において発展をし、
経済が発展をするということが私どもとしては望ましいと考えて、その方向で努力をしているところでございます。
小渕委員
ありがとうございました。
ぜひとも長期的な視野を持って若い人たちをこれからも育てていただけますように、心からお願いを申し上げたいと思います。
今お話がありました国立の沖縄工業高等専門学校について、一つ質問をさせていただきたいと思います。
さまざまな問題を抱える一方で、沖縄にはやはり無限の可能性があると思っています。
二十一世紀の新たな沖縄づくりに向け、若い人たちはもちろん、有為な人材育成は最も重要な課題であると思っています。
グローバル社会の進展に伴いまして、国際化、高度情報化も進む一方、観光、リゾートは言うまでもなく、
沖縄特有の個性あふれる産業の振興も図っていかなくてはならないと思います。
今お話しいただきましたが、政府におかれましても、沖縄県や現地の経済界などとさまざまな施策について協議を進めていると聞いています。
今お話のありました沖縄工業高等専門学校について、私は大きな夢と期待を持っているわけですけれども、それにつきまして、設立準備の状況、
また、本件の特色やポイントといいましょうか、重点などがありましたら、さらにお伺いできたらと思っております。
工藤政府参考人(文部科学省高等教育局長)
沖縄に国立の高等専門学校をというのは、地元からの強い御要望を受けまして、いろいろな経緯がございました。
平成十一年の十二月に、ちょうど小渕総理大臣の当時でございましたけれども、「国立高等専門学校設置の確実な実現」を
盛り込んだ沖縄県北部地域の振興に関する方針等が閣議決定されまして、
それを受けて、平成十二年度から具体的な創設準備を行ってまいってきております。
その後、これまでの検討で、学科、カリキュラムの内容、方法でございますとか、それに伴う教員構成、
さらには用地の確保などの見通しがつきましたので、
来年度予算に関しまして、沖縄工業高等専門学校の創設の概算要求をしているところでございます。
私ども、来年十月にこの学校の設置をいたしまして、
平成十六年四月の学生受け入れに向けて遺漏のないように諸準備に取り組んでまいりたいと思ってございます。
主な特色としましては、関係者の夢の実現ということでいろいろな構想を盛り込んでございますけれども、学科構成も、機械系から情報系、
さらには生物系まで含んだ多様なものとなってございまして、地元のニーズそれから将来の発展を見込んですばらしいものにしていくべく、
私ども、遺漏なきを期してまいりたいと思っております。
小渕委員
ありがとうございました。
この沖縄工業高等専門学校ができましたら、ここで育つ若者たちが、さらに自分たちのふるさとに対して理解を深め、情報についての技術もたくさん得ていただき、
沖縄の発展に向けてさらに働いてもらえるように、夢と期待でいっぱいでおります。どうぞまたお力いただけますように、お願いを申し上げます。
質問は以上になりますけれども、私は、今回このような質問の場をいただけたことを本当にうれしく思っております。
昨年、サミットが行われましたけれども、これから二十一世紀に向けて、私はまだ未熟で、二十代の国会議員でありますけれども、
未来に向けたさらなる沖縄のあり方を一生懸命勉強し、考えていかなくてはならないと思います。
尾身大臣を初め皆様方から今後ともいろいろと御指導いただきながら、一生懸命勉強してまいりたいと思います。
少し時間が早いですけれども、下地先生にかわらせていただきたいと思います。
本当に本日はありがとうございました。